Rainbow*Chaser

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「…嘘、だろ……」


爽やかな朝、という言葉ぴったりの、美しい小鳥のさえずりや窓から降り注ぐや わらかな光とは裏腹に、気分は最悪だった。
夢の内容は操作できないと言ったって、流石にこれは自己嫌悪というかむしろた だの嫌悪感を感じずにはいられなかった。

何せ、夢の中で自分があの変態と愛し合っていたのだから。
もちろん、そういう 意味ではなくアレな意味で。

相手の裸は見たことあるし(しかも男の夢だとかロマンだとかを根底から粉々に ぶち壊す形で)、好みなのは髪が長いことくらいで、第一身長が足りないしあん な平らでほぼいつも見えている状態の胸には色気とか何も感じないし(本人に言 ったら大怪我じゃ済まないだろう)、何度もベットインベットインと騒ぐ相手か ら今まで必死で貞操を守ってきた(相手が一応女で自分が男であるのに貞操とい う表現が正しいのかは分からないが)。

なのに、夢の中の自分は無理矢理そうなったのではなくむしろ乗り気で(だって 上だったし(あぁ、夢の中の俺は誰だ!誰が乗り移ってたんだ!)、骨が浮き出 ているほど細く、その上鍛えあげられた体だというのに、夢の中で触れた相手の 身体は柔らかく、その感覚は妙にリアルだった。
相手は相手でいつもの凶暴さはなく、でも馬鹿みたいに笑っていて、不覚にもそ の笑顔や相手の感じてる顔にときめいていたのは、…あくまで夢の中の俺だ。
そう、だから朝から下半身に熱が集まっているのは、あくまで夢の中の俺のせい だ。俺のせいじゃない。俺のせいじゃ、ない。


これでもし朝から洗濯機を回さなければならないような事態だったなら、本気で 自分を殺して解して並べて揃えて晒すことを考えるだろう。というか今もぶっち ゃけそうしたい。


こんな気持ちになったのは、いつだったか兄貴と仲良く買い物に行ったり料理を したりする夢を見た時以来だ。
あの時は朝から本気で凹んだしこんな悪夢はもう ないだろう、と思っていたが今回のこれと比べてみればあの夢がまだマシだった ように思えてくる。





普段意識していなかった相手なのに、その相手と親密になる夢を見て、現実でも 相手のことを気にするようになってしまうという話を聞いたことがある。
きっとそんなことは起こらない、と思う。ていうか起こる訳はない。

しかし。

「やっほー、ぜろっちー。元気ぃ〜?」

悪いことは重なるもので。
憂鬱な気分のまま朝食を終え、着替えようかと立ち上がったとき、ベランダに奴 が立っているのが見えた。
ガラスを割られたらたまらないので鍵を開けて奴を中に入れるが、罪悪感とかバ ツの悪さとかいろんな感情が重なって、まともに出夢の顔が見られない。


「んん〜?どうしたの人識クーン、いつもより大人しいね〜?」

しかし、出夢はこちらの心情なんて露知らず、こちらの顔を覗き込んでくる。
目の前へと迫ってくるその顔に、夢の内容がフラッシュバックする。

「…っ!」

思わず不自然なほど勢いよく顔を背けてしまう。
…やばい、悟られたかも。
冷や汗がだらだらと流れてくるのを自分でも感じる。

「人識、お前もしかして…」

出夢は驚いたような声色で、そう言った。
そして、がっちりと俺の顔を両側から 押さえ、強制的に目を合わせられる。
出夢の顔が、思いの外近くにあった。
出夢は真剣な表情から一変、にたぁと笑みを浮かべた。そして、

「ついに僕に惚れちゃった?」
「……は?」

至極楽しそうに、そう言った。予想外の言葉に、フリーズしてしまう。
出夢のほ うはといえば、こちらの反応なんかお構いなしに、そうかそうかー、などと機嫌よさそうに頷い ている。
かと思えば、左頬に添えられていた手が離れ、代わりにその場所に柔らかなもの が押し付けられる。言うまでもなく、出夢の唇である。

「いきなり何すんだ!」
「人識ったら照れなくてもいいのに〜」
「照れてねぇ!つか抱きつくな!絡みつくな!あぁもう噛み付くんじゃねぇ!! 」


こうなれば、どれだけ抵抗しようと出夢が飽きるまで離れてくれることはなく、気力も体力も根こそぎ奪われてしまう。
当然、学校になんて行ける訳なかった。

ただ、夢の中の大人しい出夢より、目の前にいる乱暴で羞恥心のカケラもない出 夢のほうがマシだ、なんて、ひっついてくる出夢を引き剥がしながら、思ってしまったのだった。



End



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冒頭が浮かんできて勢いで書いたやつです。(←
締めのやっつけっぷりがひどくてごめんなさい…!
あぁもう二人はいちゃこらしてればいいよ…

09.04.10  水霸



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